

健康薬学とは?
現在、世界一の長寿国である日本。
高齢者の健康維持や成人の生活習慣の予防への関心も高く、いかに健康に、充実したくらしを維持できるかが医療の大きな課題となっています。こうした現状に対し、発病を予防する”一次予防”と痴呆や寝たきりにならないで生活できる期間”健康寿命”を延ばすことにつながる薬学-それこそが本学科の目的です。
「いかに健康な生活を維持していくか」
この課題に向け、疾病の発症に関わる保険衛生、食品衛生、環境保全、化学物質の毒性研究など、広く生活全般に関わる知識を備え、治療のみにとらわれず、さらに進んだ予防医療の見地から地域医療やセルフメディケーションに貢献できる薬剤師が必要とされています。

多彩な分野で活躍できる人材の
育成を実現
薬科大出身者の進路は、医療分野だけではありません。化学、食品、化粧品、商社など、様々な分野で薬学の知識が求められています。また、公害センターや衛生研究所等の環境関連施設、麻薬の取り締まり、警察の鑑識なども進路として考えられます。さらに、高度な専門知識を身につけ、大学や研究所で研究に携わる道も開かれています。
健康薬学科では、薬学専門教育に加えて、食品、栄養、運動、環境、公衆衛生など健康に関する総合的な教育を行うことで、多彩な分野で活躍できる人材を育成します。
研究分野
生命科学分野
疾病にかからないための
“一次予防”計画にあたっての基礎研究分野です。
生化学
生命現象を科学的に解明するために、糖、アミノ酸とたんぱく質、脂質、酵素、ビタミン、補酵素などの生体を構成する物質の構造や性質からはじまり、生合成と代謝を分子レベルで解き明かします。さらに、生体内の生理活性物質を明らかにする学問領域です。
生体防御学
免疫学は、生体防御反応の主流として急速に発展し、感染症の予防と診断、治療に大きく貢献している学問です。免疫の機能・制御機構などや抗アレルギー薬などを研究対象としています。
放射線科学
病気の診断や治療において、放射線はなくてはならない存在となっています。より正確な診断、効果的な治療、さらには医療被ばくの低減のためには、放射線の性質や生体への影響を深く理解する必要があります。医学、薬学の発展において欠かせない重要な研究分野です。
分子生物学
遺伝子情報伝達物質DNAの操作技術は、急進展を遂げ、近い将来分子レベルで生命現象が解明され、医療や創薬への応用が期待されています。これらの新しい技術を用い、遺伝子発現、タンパク質生合性などを研究教育の対象とする分野です。
環境科学
現代社会において、農薬、PCB、ダイオキシン、環境ホルモン、フロンガス、排気ガス、有害廃棄物などの地球環境に関わる問題は非常に多く、その大半が未解決です。この分野は、環境衛生と環境保全を目的とした学問で、最も身近な薬学の研究領域です。
予防薬学分野
漢方理論を解明し、現代医療の中に生かすための手法や評価を学ぶ応用分野です。
生薬学
漢方薬を構成する生薬をはじめ、家庭薬、民間薬、伝統薬などに用いられる個々の生薬について、その基元植物を明らかにし、生物学的特性、含有する成分、薬としての作用などを解明する学問である。生薬の加工、管理保存法、鑑別法、試験法などの製剤化に関する手法の改善も行う。
薬用資源学
天然資源に医薬品のソースを求める研究分野であり、医薬品原料の確保の観点から、微生物、植物、動物、鉱物などのアプローチや民間薬へのアプローチが必要である。薬用植物の育種、栽培生産、流通のほか、バイオテクノロジーによる動植物の増殖なども対象となる。
漢方薬物学
生薬の生理活性は、合成薬に比較して一般に作用が緩和であり、作用が特定していることなどから、その薬効の実験的証明にはより巧妙な手段を必要とする。エビデンス・ベイスド・メディシンとして新薬と同レベルの評価を経て、漢方を現代に活かすための研究領域である。
漢方治療学
漢方調剤を実施する際に、薬剤師が服薬指導、薬歴管理、疑義照会、病棟業務を的確に遂行するためには、漢方の臨床を知っておく必要がある。そのために漢方理論による診断と治療について研究し、漢方薬局における患者のセルフメディケーション推進する研究分野である。
カリキュラム
人類の健康と福祉の向上に貢献できる薬剤師の育成
1年次
運動生理学
運動・休養の重要性、健康との関連性を認識するために、運動と休養による身体の生理的機能の変化を知り、運動が身体に及ぼす影響を習得します。
運動と健康
生活習慣病予防などのための適切な健康運動、ジョギングを指導できる技術を習得するため、運動生理学を基礎として運動処方の意義と実際、肥満と健康などを学び、同時に実地講習を行います。
2年次
本草学
西洋医学的な概念にとらわれない正しい漢方薬物認識の方法を身につけるため、薬物に関する記載の歴史的な変遵、漢方薬物本来の薬としての性質やその背景となる知識を、古典文献から学びます。
薬用植物学特論
医薬品開発の最も重要な資源である薬用植物。その薬品に利用されている植物成分や実用化のプロセスについて、また薬用天然資源の保護や生産性、流通、国際貿易、自然保護など広い知識を学びます。
生薬学特論
現在漢方で使用されているほぼ全ての生薬の基礎事項をマスターするため、日本薬局方収載の生薬をはじめ、局方外も含めた約250種類の生薬について、起源や特性、成分情報、薬理作用の特色と臨床応用例などを学びます。
3年次
民間薬概論
理論的裏付けが少なく応用の幅は狭いものの、一つの病気に対して、一つの薬が明確な効果を示し、安全性も高いと言える民間薬。その何が正しく、何が正しくないのかを判断する民間薬の基礎知識を学びます。
漢方理論 l
漢方薬の特徴である、独特の診断法、独自の生理・病理感に基づくアプローチ、複数の生薬の組み合わせを尊重する漢方製剤という3側面についてその理論を学びます。
漢方生薬化学
漢方生薬に含まれる化学成分について、分離精製法から化学反応性、薬理作用などを学び、化学的手段による成分探索法や定量法はど品質評価の手法を学び、複合処方における成分試験法の実験計画を作成できる知識を身につけます。
4年次
漢方薬効解析学
複数の生薬を組み合わせるため、その複合作用の解明が難しい漢方。そこで、繁用される漢方生薬を例に、臨床データ等を学び、エビデンス・ベイスド・メディシンとして通用する言葉で説明できる能力を身につけます。
漢方理論 ll
漢方理論 l に引き続き、漢方独特の理論について学び、さらに感染症の治療理論として「傷寒論」を知り、風邪症候群の症状の解析とそれに用いられる多くの漢方処方を学びます。
漢方薬理学
漢方独特の診断や薬の選択等を現代医薬での実験による薬理作用、薬効評価、安全性評価を進めるため、漢方の薬理理論を現代薬学の手段・手法で解釈し、科学性を持って理解することを学びます。
5年次
漢方製剤各論 l
大きく二種類に分類される漢方製剤のうち、保険適用の医療漢方製剤についてその特徴と分配生薬、薬効、臨床的適応、服用法、服薬指導方法など詳しく学びます。
漢方製剤各論 ll
漢方製剤のうち、主に漢方調剤薬局で調剤され、保険の適応外となる漢方湯液の医療用漢方製剤との相違点を明らかにし、配合生薬や薬効服用法など詳しく学びます。
漢方治療学総論
医療現場で行われている漢方製剤の効果・効能、副作用や相互作用などについて詳しく学び、実際の漢方医療についての知識を身につけます。
6年次
漢方処方学
患者にあった漢方製剤を処方し、調剤するのに必要な知識について、また配合生薬の選別法、補完・管理などの基礎知識や問題点について学びます。
臨床漢方治療学 l
漢方医学の処方と診断についての学び、西洋医学的診断方法との比較によりその考え方の相違を理解します。また、現在使用されている漢方製剤が"個の医療"に対応するものである知識を身につけます。
臨床漢方治療学 ll
婦人性疾患やアレルギー疾患、慢性的な胃腸疾患、虚弱体質や自律神経失調症などの症例に用いられる漢方処方について、臨床例に基づいて学びます。
漢方品質評価論
漢方薬を安心して使用するために重要となる、品質保証。そのために薬剤師の立場から漢方製剤の安全性と有効性を患者に伝える詳報について学び、同時に漢方薬製剤メーカーの安全性などに関する品質評価への取組についても学びます。
